渉外戸籍 ー 認知

「認知」とは婚姻していない父母の間に生まれた非嫡出子について、法律上親子関係を認めることをいい、父親側から自発的に生理上の自分の子であることを承諾する「任意認知」と子の側から認知を求める「認知の訴え」の提起による裁判確定により認知を成立させる「強制認知(裁判認知)」の2つに分類されます。

「事実主義」「認知主義」・・・日本の法律では、婚姻していない父母間に生まれた子の親子関係について、母と子の関係は、分娩という事実により当然発生しますから、生理上親子関係が認められれば法的にも親子関係を認める「事実主義(血縁主義)」を取り入れ、父と子の関係は、認知の届出をするという手続により成立し、法的に親子関係を発生させる意思表示により親子関係を認める「認知主義(意思主義)」を採用(原則として日本は「認知主義」です。)していますので、「認知」は父子関係について問題とされ、婚姻していない父母間に生まれた子は、たとえ生理上の親子関係が存在したとしても、認知の届出をしないと法律上の父子関係は認められません。
「認知」の要件・・・日本をはじめ多くの国では「認知主義」を採用していますが、誰でも「認知」届けをすれば父子関係が認められるかというとそうではなく、婚姻していない父母の間にできた子とその血縁上の父との親子関係について、父が自分の子として承認することにより親子関係を成立させるのが認知制度なので、一般的には生理上親子関係がない者による認知は無効と解釈されているようです。

一方、「事実主義」を採用する国は多くありませんが、中華人民共和国、フィリピン、ニュージーランド、カナダ(オンタリオ州など)などの国においては、自分の子であることを承認するまでもなく、子の出生という事実により父子関係の発生を認めています。 ただし、これらの国においても、父子関係についての客観的な事実が必要とされ、認知制度のような一定の要式に従う積極的な意思表示は必要ではありませんが、父の承認や裁判所などの公的機関の確認が必要とされているようです。

非嫡出子の親子関係の成立要件

 婚姻していない父母の間に生まれた子(非嫡出子)と父母の親子関係の成立については、国際私法では次のように判断されます。

① 父との間の親子関係については子の出生当時における父の本国法
② 母との間の親子関係については子の出生当時における母の本国法
ただし、子の本国法に「子の認知による親子関係の成立について、認知当時、その子や第3者の承諾・同意があることが認知の要件とする」規定がある場合は、その要件も満たさなければなりません。 これは、子の保護という側面と、子が成長したとき親が扶養を受けることを目的で認知されるということがある為、子の本国法も適用して子の保護を図っています。

日本の「認知」の要件

 日本では、父親が自発的に子を認知する「任意認知」の実質的要件は以下のようになります。形式的要件は市区町村長へ戸籍の届出により認知が成立し親子関係が成立します。
認知する者(父)の要件
 ① 認知する者は血縁上の父であること
 ② 認知する者は認知の意思を有すること
    (意思能力があれば被後見人などの制限行為能力者も可能です。)
認知される者(子)の要件
 ③ 認知される子は他の者が認知していない非嫡出子であること
 ④ 認知される子が成年であるときは本人の承諾があること
 ⑤ 死亡した子を認知する場合は、その子に直系卑属(子や孫)があること。
     その直系卑属が成年者であるときはその者の承諾があること
 ⑥ 胎児を認知するときは、胎児の母の承諾があること

国際私法における「認知」の要件

実質的要件・・・日本では父と子の親子関係については「認知主義」を採用していますが、他の国では、父子関係についても子と血縁関係のある生理上の者を父とする「事実主義」を採っている国があるので、国際私法では、認知の実質的要件について、次のいずれかの法律により判断されます。
① 子の出生当時における父又は母の本国法
② 認知当時の認知する者の本国法
③ 子の本国法
○保護要件・・・①②の場合において、子の本国法が子や第3者の承諾・同意を要件とするなどの子の保護要件の規定がある場合は、その要件も満たさなければなりません。

形式的要件・・・形式的要件については
① 上記の認知の成立について適用した国の方式による
② 認知の行為を行う場所の方式    のいずれかとなります。
たとえば、日本人父が認知する場合、日本の任意認知成立要件を適用するときは、形式的要件も日本の法を適用するので、市区町村長へ戸籍の届出によりすることになります。 ただし、子の本国法の保護要件を満たす必要があるので、母親が韓国人の場合、韓国は血統主義なので子は韓国国籍となり、韓国の認知における子の保護要件を規定した法文の証明書やその保護要件を子が備えていることを証明した書面が必要となります。

日本に住む外国人父が日本人の子を認知する場合、認知成立の実質的要件が父の本国法による場合であっても、認知の行為を行う場所の方式によることができるので、日本人母は、市区町村長への届出することにより母の戸籍に認知事項を記載されます。

胎児認知の要件・・・母の胎内にある子でも父は認知することができますが、胎児はまだ出生していないので国籍がなく、本国の法律もありません。 この場合は、「子の本国法」は「母の本国法」と読み替えるものとしています。 よって、胎児認知については、父の本国の法律か胎児の母の本国の法律のいずれかを選択して適用することになります。 子の保護要件については、母の本国の法律が認知についての規定があれば、その要件を満たさなければなりません。 

なお、母が外国人で日本人父が胎児認知し、胎児が出生したときは、認知の効果は出生の時に生じ、出生の時に日本人の父があることになるので、出生した子は日本国籍を取得します。 そして、出生する子の氏は自由に定めることができ、単独で新戸籍が編成されます。

外国の認知の保護要件

日本における認知の保護要件は次のようになっています。
①認知される者が成年の場合は、認知される者の承諾
②胎児認知の場合は、母の承諾
③死亡した子を認知する場合は、死亡した子の直系卑属(子や孫など)が成年の時はその者の承諾

大韓民国、台湾、タイの保護要件・・・規定がないので、考慮する必要はありません。

「事実主義」を採用している国の保護要件・・・中華人民共和国などの事実主義を採用している国は、そもそも認知の規定がないので、保護要件に関する規定もありません。 なので「事実主義」を採用している国の子を認知する場合は、子の保護要件を考慮する必要はありませんが、認知届の際には、事実主義を採用していることを証明する書面(その国の法文の写し)を提出することになります。

「婚姻準正」、「認知準正」

「準正」とは、非嫡出子が嫡出子の身分を取得することを云います。
簡単に言えば、「できちゃった婚」のように、婚姻より子の出生が先にある場合に、婚姻することにより非嫡出子を嫡出子とするものです。
非嫡出子の福祉と保護を図り、婚姻を促進・奨励することを目的とした制度です。

準正の要件
① 父母が婚姻すること
② 認知により法的に親子関係が生じること

「婚姻準正」「認知準正」・・・準正には2つあり、「婚姻準正」とは、非嫡出子を認知した後、父母が婚姻することにより自動的に嫡出子とするもの。 「認知準正」とは、婚姻前に出生した子を婚姻後に認知することにより嫡出子とするものです。 「婚姻」が先か「認知」が先かの違いで、婚姻前に子が出生することは共通しますが、認知のタイミングが婚姻前か後かで異なります。 また、通説では嫡出子となるのは共に婚姻のときからとなっています。

日本人と外国人を父母とする準正・・・国際私法では、婚姻準正の場合は婚姻したとき、認知準正の場合は認知したときの父又は母又は子のいずれかの本国法によって①②の要件が満たされれば、子は嫡出子となります。

嫡出子出生届

嫡出子出生届・・・父母が共に日本人で上記の認知準正で婚姻後に認知する場合には、「嫡出子出生届」をすることにより子は認知され、嫡出子として父母の戸籍に入籍します。 外国人と日本人の間にできた子については、次のようになります。

外国人父ー日本人母の場合
母子の親子関係は、分娩の事実により成立するので、子は出生当時の母の国籍を取得し、準正の要件は子又は母の国である日本の法律により判断され、届出により母の戸籍に嫡出子として入籍します。

日本人父ー外国人母の場合
子の出生時、婚姻関係が成立しておらず父子の親子関係がないので、子は日本国籍を取得しません。 この場合は、婚姻後に嫡出子出生届をしても父の戸籍には入籍されず、外国人の子として父の戸籍の身分事項欄に出生届をした旨の記載がされるにとどまりますが、子が20歳までに法務大臣に届出ることにより日本国籍を取得することができます。日本国籍を取得すれば、父の戸籍に入籍します。

事実主義を採用する外国人父の非嫡出子の出生届

 事実主義を採用する外国人父と日本人母(婚姻していない)の間にできた非嫡出子は、父の認知がなくても父子関係が成立していることになります。 この場合には、父の国籍証明書、父の国が事実主義を採用していることの証明書として法文の写し、子の父であることの証明書を添付して届出ることにより、子は母の戸籍に入り、子の戸籍に父の氏名が記載され、父が子を認知したことになります。 

事実主義を採用する外国人の非嫡出子を日本人父が認知する場合

 非嫡出子である外国人の本国が事実主義を採用していても、父の本国の法律(日本の法律)が認知主義を採用しているので、父の認知がなければ父子関係は認められません。 よって、認知の届をしなければ父子関係は認められないことになります。

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